「退職金があるから、老後はなんとかなる」

ご相談の中で、一番よく聞く言葉のひとつです。

特に40代後半から50代の方に多い。旦那さんに退職金の金額を聞いたことがあるかと尋ねると、ほとんどの方が「ない」と答えます。

退職金は「あるかどうか」ではなく「いくらで、何に使うか」を確認しておくものです。 確認できていない方は、この記事を読んだ後に1つだけ、旦那さんに「退職金っていくらくらいか知ってる?」と聞いてみてください。それだけで十分です。

こんにちは。Family Moneyの青木計太です。晩産・晩婚夫婦のお金問題を専門にしているFPとして、教育費と老後資金の同時負担に悩むご家庭の相談を多くお受けしています。

この記事は、退職金を「最後の切り札」と漠然と考えている40代後半から50代のご家庭に向けて書いています。

1. 退職金が「消える」仕組み

退職金は、まとまったお金が一度に入ります。だから「大きなお金が入る=老後も安心」という感覚になりやすい。

でも実際の相談現場では、退職金を受け取った後に「ほとんど残っていない」というご家庭を何度も見てきました。

消え方にはパターンがあります。

住宅ローンの残債を退職金で一括返済する。これが一番多い。定年時にまだローンが残っている家庭は少なくありません。晩産家庭では住宅購入も遅れやすいため、ローン完済が65歳や70歳に設定されていることもあります。

次に多いのが、子供の教育費の残り。大学3年生や4年生の学費がまだ残っている時期に退職を迎えるケースです。40代で出産したご家庭では、子供が大学を卒業する頃に親は60代前半。教育費の最終支払いと退職金の受け取りがほぼ同時になります。

そして家のリフォームや修繕。築20年を超えると外壁や水回りの工事が必要になる時期と重なります。

退職金が消えるのは、無駄遣いではありません。どれも「必要な支出」です。問題は、それらを退職金で賄う前提になっていること。つまり、退職金を老後資金として使える金額が、最初から思っているより少ないということです。

2. 中小企業と大企業では、退職金に大きな差がある

退職金の金額は、勤め先の規模で大きく変わります。

大企業の退職金は2,000万円前後と言われることが多いですが、中小企業では700万から800万円程度というデータもあります。その差は1,000万円以上になることもある。

ここで重要なのは、旦那さんの勤め先がどちらに近いかを知っているかどうかです。

相談にいらっしゃる方の多くは、退職金の金額を確認したことがありません。「出るとは思うけど、いくらかは聞いたことがない」。この状態が何年も、場合によっては何十年も続いている。

退職金の金額は、会社の人事や総務に聞けばおおよその目安は教えてもらえます。旦那さんに「退職金っていくらくらいか知ってる?」と聞くだけでも、一歩前に進めます。

3. 年金だけで毎月足りるかを確認する

退職金の次に確認したいのが、年金の金額です。

ねんきん定期便を見たことがありますか。50歳以降であれば、将来受け取れる見込み額が記載されています。

相談の中で「ねんきん定期便、月7万円って書いてあった。これだけ?」と驚かれる方がいます。夫婦合わせても月20万円を下回るケースは珍しくありません。

一方で、生活費は月22万から25万円かかるのが一般的です。年金だけでは毎月数万円の赤字になる計算です。

この「毎月の赤字幅」を退職金で補填しながら暮らす。これが多くの家庭の年金生活の実態です。

退職金が1,000万円あっても、毎月5万円の赤字なら年間60万円。15年ほどで底をつく計算になります。退職金がローンや教育費で半分になっていたら、もっと早い。

「退職金がいくらか」と「年金で毎月いくら足りないか」。この2つの数字を知っているかどうかで、40代の今やるべきことが変わります。

4. 確認するのは3つだけ

ここまで読むと不安になるかもしれません。でも、確認するのはたった3つです。

1つ目。退職金のおおよその金額。旦那さんの会社の退職金制度を確認する。人事に聞けば目安は教えてもらえます。

2つ目。ねんきん定期便の金額。50歳以上なら見込額が載っています。ねんきんネットでも確認できます。夫婦それぞれ確認してください。

3つ目。今の毎月の生活費。ざっくりで構いません。固定費(住居・保険・通信)と変動費(食費・日用品・娯楽)に分けるだけ。

この3つがわかると「退職後の毎月の赤字幅」が見えます。赤字幅がわかれば「退職金で何年持つか」がわかる。何年持つかがわかれば「今から何をすればいいか」が見えてきます。

家計は間取りと同じです。家は広さ以上に部屋を作れない。リビングを広げすぎると収納が取れない。でも収納ばかりでは暮らしが窮屈で続かない。何にいくらの「割合」を決めるのが一歩目です。

5. 「もう遅い」は、ほぼ嘘

「50代で気づいても、もう遅い」。

そう思って動けない方がとても多いです。でも、お金に義務教育はなかった世代です。知らなくて当然。気づいた今日がスタートラインです。

大事なのは、数字を確認しただけで「やるべきこと」が見えてくるということ。退職金がいくらか確認しただけで、住宅ローンの繰り上げ返済をどうするか、教育費の準備をどう組み替えるかが初めて考えられるようになります。

確認する前と後では、同じ不安でも質が変わります。「なんとなく不安」が「ここが足りない」に変わる。それだけで、次の一手が見えてきます。

やるとしたら今日が一番早い。過去には戻れないので。

Q. 旦那さんに退職金の話を切り出しにくいのですが

お金の話をすると、旦那さんが「俺の稼ぎが少ないってこと?」と受け取ってしまうケースは少なくありません。

おすすめは、「責める」文脈ではなく「確認する」文脈で聞くことです。

「退職金ってうちはどのくらいか知ってる? 周りで調べている人がいて、うちも知っておいた方がいいかなと思って」

この一言なら、相手を否定する響きになりにくいです。

Q. ねんきん定期便が届いていたはずだけど、捨ててしまったかもしれません

ねんきんネット(日本年金機構のサイト)に登録すると、いつでも確認できます。マイナンバーカードがあれば、マイナポータルからもアクセスできます。

50歳以上であれば、今の加入状況のまま60歳まで働いた場合の見込み額が表示されます。まずはご自身の分だけでも確認してみてください。

Q. 退職金が少ない場合、何から手をつければいいですか

まず「退職金をいくら老後に回せるか」を計算してみてください。退職金の総額から、住宅ローンの残債と教育費の残りを引く。残った金額が「老後に使えるお金」です。

その金額と年金の赤字幅から「何年持つか」がわかります。足りない部分をどうするかは、その数字を見てから考えれば十分です。

焦って運用や保険に飛びつくより、まず数字を並べる方が先です。

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「退職金があるから大丈夫」。

その安心感は、金額を確認した上での安心であれば心強いものです。でも確認したことがないままの「大丈夫」は、根拠のない希望でしかありません。

退職金の金額、年金の見込み額、毎月の生活費。この3つを確認するだけで、今のままで大丈夫なのか、何を変えればいいのかが見えてきます。

難しい計算は必要ありません。確認するだけ。気づくだけ。それだけで、漠然とした不安が「やることリスト」に変わります。

応援しています。