「子供のために自分の保険を解約した。でも入院したらどうしよう」
相談の現場で、この言葉を口にする方は少なくありません。
上の子の大学進学にあたり、入学金が足りなかった。旦那さんの保険は「万が一のため」に残したけれど、自分の保険は全部解約して入学資金に充てた。
「子供のためなら仕方ない」と割り切ったつもりだった。でも40代後半で保険がゼロになった今、健康診断でちょっとした数値の異常が出るたびに「もし入院したら」と考えてしまう。
こんにちは。Family Moneyの青木計太です。晩産・晩婚夫婦のお金問題を専門にしているFPとして、教育費と老後資金の同時負担に悩むご家庭の相談を多くお受けしています。
この記事は、教育費を優先して自分の安全網を後回しにしてしまった方、またはこれから教育費のピークを迎える方に向けて書いています。
1. 「自分の保険を解約した」家庭は珍しくない
「うちだけがこんな無茶をしているんじゃないか」。
そう思って一人で抱えている方がとても多いです。でも実際には、教育費の捻出のために自分の保険を解約したり、貯蓄型保険を中途解約して学費に充てたりする家庭は珍しくありません。
特に40代で出産したご家庭は、教育費のピークが40代後半から50代に来ます。住宅ローンも残っている。旦那さんの定年も近づいている。
その状況で「何かを削る」となったとき、真っ先に手放すのが自分の保険です。旦那さんの保険は「稼ぎ頭だから」と残す。でも自分のは「パートだし、最悪なくても」と外してしまう。
これは意志の弱さではなく、選択肢が限られた中での構造的な判断です。
お金に義務教育なんてなかった世代。知らなくて当然です。自分を責める必要はありません。
2. 保険を外す前に知っておきたい「公的な安全網」
「入院したら家計が終わる」
そう思って不安を抱えている方に、まず知ってほしいことがあります。
日本には、1か月の医療費の自己負担に上限を設ける制度があります。高額療養費制度です。
収入にもよりますが、多くの家庭ではひと月の窓口負担が数万円台でおさまる仕組みになっています。「青天井で何百万」ではないんですね。
もちろん、差額ベッド代や食事代など対象外のものもあります。そこは貯蓄でカバーする部分です。
こわいのは、制度を知らないまま「不安だから」と保険を増やして、毎月の保険料で家計が痩せていくこと。逆に、制度を知らないまま「お金がないから」と保険を全部外して、必要な備えまで捨ててしまうこと。
どちらも、「公的な仕組みでどこまで守られているか」を知らないまま判断しているという点では同じです。
3. 教育費を出すときの「順番」
教育費で家計が苦しくなったとき、多くの方は「何を削るか」から考えます。
でも本当に大事なのは、「何を削るか」ではなく「何を残すか」です。
子供の教育費は聖域にしたい気持ちはわかります。塾を辞めさせたくない。子供の希望を止めたくない。でも、自分の安全網を全部外してしまうと、万が一のときに家計が一気に崩れます。
確認したいのは、この3つだけ。
- 高額療養費制度で、自分の家庭の自己負担上限はいくらか
- その金額を、貯蓄から出せる余力があるか
- 旦那さんに万が一があったときの遺族年金の見込み額
この3つが見えるだけで、「本当に保険が必要な部分」と「公的制度でカバーできる部分」の境目がわかります。
全部を保険で守る必要はありません。でも、全部を外していいわけでもない。
「足りない分だけ、備える」。これが、教育費を出しながら自分も守るための順番です。
4. 「何を大事にしたいか」を並べ直す
教育費に全力で走っている最中は、自分のことを考える余裕がありません。
「子供が卒業してから自分のことは考えよう」
その気持ちはよくわかります。でも、教育費が終わった後に自分の番が来るとは限りません。
子供にかけるのは惜しくない。でもふと、自分の老後が消えていることに気づく瞬間がある。
大事なのは、「子供のため」と「自分のため」を二択にしないことです。
教育費をかけること自体が悪いのではなくて、順番の問題です。自分の安全網を残したうえで、教育費にいくらまで出せるかを組む。
「何を大事にしたいか」を、自分たちの価値観で並べ直してみてください。教育費が1位でもいい。でも、自分の安全網を0位にしないでください。
好きじゃないものには使わないと決めて初めて、残すべきものが見えてきます。
Q&A
Q. 40代後半で保険に入り直すと、保険料がすごく高くなりませんか?
確かに、20代のときと比べると保険料は上がります。でも「保険に入らない=リスクを全部自分で抱える」ではありません。高額療養費制度でカバーされる範囲を確認したうえで、足りない部分だけを最小限の保険で備える方法もあります。全部入り直す必要はありません。
Q. 旦那さんの保険は残して自分のだけ解約したのですが、逆のほうがよかったのでしょうか?
「どちらを残すか」は、収入の大きさだけで決めないほうがいいです。旦那さんに万が一があったときは遺族年金が出ますが、妻に万が一があった場合の保障は手薄なことが多い。お子さんの年齢や家計の構造によっても変わるので、一度「どちらが倒れたときに家計が回らなくなるか」をシミュレーションしてみてください。
Q. 教育費のために貯蓄型保険を解約しました。損をした気分です。
途中解約すると、払い込んだ金額より少なく戻ることが多いです。損をした気持ちはよくわかります。でも、その判断をしたのは子供の進学のため。それ自体は間違っていません。大事なのは、次の一手です。解約して手元に来たお金の使い道を「教育費」と「最低限の安全網の確保」に分けて考えてみてください。
子供のためにがんばっている「あなた」も、守られていい
子供の教育費に全力を注いでいるあなたは、それだけで十分がんばっています。
でも、自分を後回しにしすぎると、あなた自身が倒れたときに家計も倒れます。
それは、子供のためにもならない。
自分の安全網を残すことは、わがままでも贅沢でもありません。家族を守る土台を守っているだけです。
やることは大きなことではありません。ねんきん定期便の見込み額を確認する。高額療養費の自己負担限度額を調べる。それだけでいい。
自分を守ることが、家族を守ることにつながります。
あなたの「ここから」を、応援しています。