「うちは国立志望だから、教育費はそこまで心配していなかったんです」

そんなご家庭からの相談が、最近増えています。

2025年度、東京大学が授業料を年間約53万円から約64万円へ引き上げました。約2割の値上げです。そして2026年度には名古屋工業大学、埼玉大学、電気通信大学なども追従しています。

20年間据え置きだった国立大学の授業料が、動き始めました。

「国立なら安いから大丈夫」。そう思って計画を立てていたのに、その前提が変わった。年間10万円の差は、4年間で40万円。お子さんが2人いれば80万円。「国立に行ってくれれば、その分を老後に回せる」という計算が、静かに崩れています。

でも、慌てなくて大丈夫です。

計画の前提が変わったなら、やることはひとつ。自分の家の数字を、もう一度見てみるだけです。

特別な知識はいりません。「見る」だけで、次に何をすればいいかが見えてきます。

1. 国立大学の授業料、何が変わったのか

国立大学の授業料は、2005年度から約20年間、年間535,800円で据え置かれていました。

それが2025年度、東京大学が年間約642,960円に引き上げ。約2割の値上げです。背景には、研究費の確保や施設の老朽化、国からの運営費交付金の削減があります。

そして、この動きは東京大学だけにとどまりませんでした。2026年度には他の国立大学も追従し始めています。

ポイントは、「もう元には戻らない可能性が高い」ということです。

今お子さんが小学生なら、大学に入るのは7年後、10年後。その頃にはさらに上がっている可能性もあります。「国立だから安い」は、もう前提にできない時代に入りました。

2. 4年間で40万、兄弟2人で80万の差が生まれる

年間10万円の差は、小さく見えるかもしれません。

でも4年間で40万円。兄弟2人なら80万円です。

この80万円は、もともと「国立に行ってくれれば老後資金に回せる」と計算していたお金です。つまり、教育費が増えた分だけ、老後の備えが減ることになります。

教育費と老後の備えは、同じ財布から出ています。片方が膨らめば、片方が削れる。

晩婚・晩産のご家庭では、お子さんの大学卒業と旦那さんの定年が近い時期に重なることも珍しくありません。「教育費が終わってから老後を考えよう」では、考える時間がほとんど残っていない場合があります。

3. 「計画を立てたから大丈夫」の落とし穴

「うちは学資保険もあるし、毎月少しずつ貯めてます」

そう話してくださるご家庭も多いです。計画を立てていること自体はとても素晴らしいことです。

ただ、その計画は「いつの数字」で作りましたか。

お子さんが生まれた頃に立てた計画なら、国立大学の授業料は年間約54万円の前提だったはずです。でも今はすでに64万円に上がっている大学があり、さらに上がる可能性がある。

計画を立てたことがゴールではなく、前提が変わったら見直すことがゴールです。

お金に義務教育はありませんでした。親の世代の「正解」が、今の正解とは限りません。昔は銀行に置くだけで年3%ついた時代もありましたが、今は100万円を預けても利息は数百円です。時代が変われば、前提も変わります。

4. 見直しは難しくない。「3つのD」を確認するだけ

「見直しましょう」と言われても、何をどう見直せばいいのか分からない。そう感じるのは自然なことです。

私がご相談を受けるとき、いつもお伝えしているのは「3つのD」です。

D1. どれを まず、今の支出が一覧で見えていますか。月々の支出、年間の大きな支出、これから先の教育費。全部でなくていいので、大きなものだけでも書き出してみてください。

D2. どれぐらい 教育費は「国立4年間で約250万円」と思っていたかもしれません。でも値上げ後は約260万円。私立との差額も縮まっています。今の数字に合わせて、ざっくり更新するだけで十分です。

D3. どうする ここが一番大事なところです。足りない分を「食費を削って」「自分の服を減らして」と節約で埋めようとすると、長く続きません。

大切なのは、「何を優先したいか」を自分の価値観で決めること。

たとえば「子供の教育は最優先。でも家族の旅行も年に一度は行きたい」。その優先順位があるだけで、削るべきものと残すべきものが自然に見えてきます。

5. 今日できる「見える化」の第一歩

「3つのD」と聞くと大げさに感じるかもしれませんが、最初の一歩は本当に小さなことです。

お子さんが大学に入る年を書き出す。

それだけで構いません。

上の子が大学に入る年、下の子が入る年。兄弟が重なる年はあるか。旦那さんの定年は何歳か。住宅ローンの完済は何年後か。

紙に4つか5つの年を書くだけで、「出費が集中する年」が見えてきます。見えれば、そこに向けて今から少しずつ備える選択ができます。

入口の小さな差が、10年20年で大きな差になります。特別なことをしなくても、「見える」だけで動き方が変わります。

Q. 今から学資保険に入り直した方がいいですか?

学資保険が悪いわけではありませんが、「学資保険に入っていれば安心」という前提が変わっている可能性があります。まず今の学資保険で受け取れる金額と、実際にかかりそうな教育費を並べてみてください。その差額が見えれば、追加で何をすべきかが分かります。

Q. 値上げに備えて、今すぐ貯蓄額を増やすべきですか?

無理に増やすより、まず「今の計画が現実と合っているか」を確認する方が先です。合っていれば安心できますし、合っていなければどこを調整するか考えればいい。焦って貯蓄額だけ増やしても、生活が苦しくなって続かなければ意味がありません。

Q. 国立の値上げはこれからも続きますか?

正確な予測は難しいですが、国からの運営費交付金が減り続ける中で、多くの大学が値上げを検討しているのは事実です。だからこそ、「国立なら安い」を前提にせず、多少上がっても対応できる計画にしておくことが大切です。

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国立大学の授業料が上がったことは、誰のせいでもありません。

でも、「前提が変わったのに、計画をそのままにしている」ことは、気づいた今日から変えられます。

難しいことは何もいりません。お子さんが大学に入る年と、旦那さんの定年の年。まずその2つを紙に書いてみてください。

「あ、ここ重なるな」「ここまでに準備が必要なんだ」。

それが見えた瞬間、漠然とした不安が「やることリスト」に変わります。

あなたのご家庭のペースで、大丈夫です。一歩ずつ、一緒に整理していきましょう。