「年収はそこそこあるはずなのに、なぜ貯まらないんだろう」

この悩みを打ち明けてくれる方が、最近とても増えています。

世帯年収は1000万円近くある。共働きで頑張っている。贅沢をしているつもりもない。なのに、貯金の残高がまったく増えない。ボーナスが入っても使い道はすでに全部決まっていて、「自由に使えるお金」なんてどこにもない。

特に、高校生と中学生が重なっている家庭は深刻です。塾代、部活の遠征費、模試代、受験料。気がつくと、月の教育費だけで20万円を超えている。

「うちは高収入のはずだから大丈夫」。 ずっとそう思ってきた。でもふと通帳を見ると、5年前より残高が減っている。

貯まらないのは、収入が足りないからではありません。「出ていく時期」が重なっているからです。時期を見渡すだけで、今やるべきことが絞れます。

こんにちは。Family Moneyの青木計太です。 晩産・晩婚夫婦のお金問題を専門にしているFPとして、「収入はあるのに将来が不安」というご家庭の相談を多くお受けしています。

1. 「高収入貧乏」が起きる構造

年収1000万円。手取りに直すと、おおよそ700万円前後です。月に換算すると58万円ほど。

ここから住宅ローン、食費、光熱費、保険料、車の維持費。これだけで30万円以上が消えます。

残り28万円。ここに教育費が乗ります。

高3と中3が重なると、塾代だけで月15万円を超えることは珍しくありません。夏期講習、冬期講習、合宿、模試。通常授業以外の請求が次から次へと届きます。

手取り58万円。固定費30万円、教育費15万円。残りは13万円

ここから食費の残り、被服費、医療費、交際費、通信費を出すと、もう何も残らない。

「年収1000万あれば余裕でしょ」と周囲は言います。 でも家計の中身を見ると、余裕なんてどこにもない。

これが「高収入貧乏」の正体です。

2. 本当のリスクは「今」ではなく「5年後」

教育費のピーク期が苦しいのは、ある意味で仕方がありません。 問題は、ピークが過ぎた後に何が残っているかです。

40代後半で子供を大学に送り出したとき、自分たちの老後資金はいくら残っているでしょうか。

もし今、貯金を取り崩して教育費に充てているなら、大学卒業後に手元に残るのは、かなり少ないかもしれません。

私がご相談の中でよくお伝えするのは、こういうことです。

「入口の小さな差は、今は見えません。でも10年、20年で見ると、数百万円の差になっていることがあります。特別なことをしたわけじゃなくて、ただ順番を少し早く整えただけ」。

教育費を出し切った後に、老後の準備期間がどれだけ残っているか。 ここが、晩産・晩婚家庭にとっての分かれ道です。

3. 収入の多さではなく「出ていく順番」を整理する

「もっと稼がなきゃ」と考える方が多いのですが、年収を100万円上げても、教育費ピーク期は同じように苦しくなります。

なぜなら、収入が増えると支出も自然に膨らむからです。 住宅のグレードが上がり、塾のコース数が増え、「このくらいなら大丈夫」のラインが少しずつ上がっていく。

逆に言えば、収入が変わらなくても、出ていくお金の「順番」を整理するだけで景色が変わるケースはたくさんあります。

家計を整理するとき、私がよくお話しするのは「3つの時間軸」です。

近いお金(1〜3年以内に使うもの) 受験費用、入学金、部活の遠征費など。これは手をつけやすい場所に置いておくしかない。

中くらいのお金(5〜10年で使うもの) 大学の学費、車の買い替え、住宅の修繕。ここを今から見える化しておくと、ピーク期の衝撃が和らぐ。

ずっと先のお金(定年後に使うもの) 老後の生活費。今すぐ触る必要はないけれど、「ここには手をつけない」と線を引くことが大事。

お金を「近い・中くらい・ずっと先」に分けて、それぞれの置き場所を決めるだけ。それだけで「全部足りない」から「ここは足りている、ここが足りない」に変わります。

4. 「いくら使っていいか」が分かると、不安が小さくなる

年収1000万円の家庭に限らず、40代のご家庭の不安の正体は「漠然としている」ことにあります。

「老後が不安」「教育費が心配」「貯金が足りない」。 でも、いくら足りないのか、何年後にいくら必要なのかが分かっていない。

不安が数字になっていないから、際限なく膨らんでいく。

私の相談に来られた方でこうおっしゃった方がいます。 「もっと今を楽しみたいのに、怖くてお金が使えない。旅行にも外食にも、いつも罪悪感がある」。

この気持ちは、とてもよく分かります。

でも、「使っていいお金」と「守るお金」の線引きができると、同じ年収でも気持ちが変わります

家計の整理は、節約のためではありません。 「ここまでは使って大丈夫」と分かるために、一度ぜんぶ机の上に並べるのです。

5. 年収ではなく「何年後に何が来るか」を年表にしてみる

教育費と老後資金を同時に考えるとき、最も役に立つのは家計の年表です。

やり方は難しくありません。

今から定年まで、1年ごとに「入ってくるお金」と「出ていくお金」を並べるだけ。

すると、こういうことが見えてきます。

「来年は上の子の大学入学金と、車検が重なる」 「3年後に下の子が高校受験で、塾代が跳ね上がる」 「旦那さんが55歳で役職定年。そのとき下の子はまだ大学1年生」

全部を同時に解決する必要はありません。 何年後にどの山が来るかが分かれば、今やるべきことが1つに絞れます。

家計の年表は、完璧に作る必要はありません。ざっくりでも「何年後に何が来るか」が見えるだけで、漠然とした不安が「具体的な準備」に変わります

Q. 年収が高いと支援制度も使えないのでは?

「高校無償化の所得制限に引っかかる」「奨学金も対象外になった」という声はよく聞きます。

世帯年収が高いと、制度の上では「余裕がある家庭」と判定されます。でも実際の家計は余裕がない。この矛盾に苦しんでいる方は多いです。

だからこそ、制度に頼れない分、自分たちで「お金の優先順位」を整理しておくことが大切です。 制度の線引きは変えられませんが、家計の中の線引きは自分たちで決められます。

Q. 教育費を削ると子供に申し訳ない気持ちになります

「上の子と同じようにしてあげたい」「周りの子と差をつけたくない」。 この気持ちは、親として当然です。

でも、教育費を「全員に最大限」かけることが、家族にとって一番いい選択とは限りません。

私はいつもこうお伝えしています。

「何にお金をかけるか、何を手放すか。これは家庭ごとの価値観で決めていいのです。正解はありません。ただ、全部に出すと必ずどこかが足りなくなる。だから自分たちの軸で、並べる。それが一番大事なことです」。

年収の多い少ないで、家計の安心は決まりません

「年収1000万あるのに、なんでこんなに苦しいんだろう」。 その感覚は、間違っていません。

教育費のピーク期は、収入が多くても少なくても、同じように苦しくなります。 問題は収入の額ではなく、「何年後にいくら出ていくか」が見えていないことにあります。

完璧な家計を作る必要はありません。 「ここまでは出していい」「ここは守る」。この線引きを一度でも引いてみるだけで、同じ年収でも、見えている景色が変わります。

応援しています。一緒に、一度ぜんぶ並べてみましょう。