「教育費に全部使い切ってしまった。後悔はない。でも、自分の老後が消えた」
相談に来られる50代後半の方から、この言葉を何度も聞いてきました。
子供が大学を卒業して、やっとひと区切り。ほっとしたのもつかの間、通帳を見ると残高がほとんどない。周りの同年代は2,000万あるらしい。うちは500万もない。
こんにちは。Family Moneyの青木計太です。晩産・晩婚夫婦のお金問題を専門にしているFPとして、教育費と老後資金の同時負担に悩むご家庭の相談を多くお受けしています。
この記事は、教育費を払い終えた50代後半の方に向けて書いています。
1. 「教育費に全部使った」は、実は珍しくない
「うちだけが貯金ゼロなんじゃないか」。
そう思って不安になる方がとても多いです。でも、相談の現場で見ていると、教育費で貯蓄を使い果たした家庭は珍しくありません。
40代で出産したご家庭は、子供が大学を卒業する時に親は62歳前後。教育費のピークと定年がほぼ同時に来る構造です。
教育費を準備する「貯め時」が通常の家庭より短いうえに、住宅ローンも並行して走っている。教育費に全力を注いだ結果、老後資金がゼロになるのは、意志の問題ではなく、構造の問題です。
お金に義務教育なんてなかった世代。知らなくて当然です。自分を責める必要はありません。
2. 「もう遅い」は、計算する前の感情
「58歳からNISAを始めたけど、あと7年で定年。増える前に取り崩すことにならないか」
こういう相談もよくあります。
気持ちはわかります。でも「遅い」かどうかは、感情ではなく数字で判断するものです。
まず確認したいのは、この2つだけ。
- ねんきん定期便の見込み額(50歳以上なら実額が載っています)
- 今の生活費が月いくらか
年金の見込み額と生活費の差額。この「月いくら足りないか」が見えるだけで、漠然とした恐怖が「対策できる数字」に変わります。
「足りないかも」は、計算する前の感情です。数字にすれば、不安は半分になります。
3. 投資の前に、お金の「置き場所」を整理する
NISAの話題を見るたびに焦る気持ちは自然です。でも、焦って始めると「NISA貧乏」になりかねません。
お金の使い方という土台を直さないまま、運用だけ足すのは、地盤が緩い場所に家を建てるようなものです。
順番は3つ。
- まず、半年分の生活費を手元に残す(これは投資に回さない)
- 次に、数年以内に使うお金(車検、家の修繕、冠婚葬祭)を別にする
- 残ったお金だけを、運用に回す
NISAは「増やす」道具であると同時に、「減らさない置き場所」として使う発想もあります。全額を株式に入れなくてもいい。自分のペースで、怖くない金額から始めた人のほうが、結果的に長く続けられます。
4. 「5年早い」だけで生まれる余白
入口の小さな差は、今は見えません。でも10年、20年で見ると、数百万円の差になっていることがあります。
これは特別なテクニックを使ったのではなく、始めるタイミングが早かっただけで開いた差です。
「今から始めても意味がない」と思うかもしれません。でも、58歳から65歳まで7年間、月3万円を積み立てるだけでも250万円以上になります。運用益を加えなくても、です。
大事なのは金額の大きさではなく、「始めた」という事実。それが自分の老後に対する安心感を作ります。
5. 教育費が終わった後の「自分の番」
貯めること自体が目的ではありません。お金は健康と楽しいことに使いながら、幸せに長生きするための道具です。
子供のために全力で走ってきた。それは素晴らしいことです。
でも、教育費が終わった今こそ、自分の番です。
「何を大事にしたいか」を、自分たちの価値観で並べ直す。食費、趣味、健康、旅行。どれが1番でもいい。優先順位に正解はありません。あるのは、あなたの価値観だけです。
好きじゃないものには使わないと決めて初めて、貯める意味が生まれます。
Q&A
Q. NISAで失敗したらどうしよう。元本が減るのが怖いです。
怖い気持ちは自然です。怖いまま始めた人ほど、値下がりしたときに慌てて売ってしまいます。月2,500円でも3,000円でも、「これなら無理がない」と思える額から始めるのが、結果的にいちばん増えます。怖くない金額で始めるのが正解です。
Q. 旦那さんに退職金の額を聞いたことがないのですが。
とても多いケースです。いきなり「退職金いくら?」と聞くと身構えられることもあります。「会社に退職金の制度ってある?」から始めてみてください。制度の有無を確認するだけでも、老後の見通しは大きく変わります。中小企業の退職金は大企業と1,000万円以上の差があると言われています。金額を確認するだけで、計画の精度が上がります。
Q. 50代後半から家計を整えるのは、正直キツくないですか。
最初の3ヶ月がいちばん大変です。でも整ってきたら、そんなに毎回ガツガツやらなくても、あとは繰り返すだけ。月に数万円プラスになって「よかったね」で終わるようになります。最初だけ集中して、あとは仕組みに任せる。それが続く形です。
あなたの「ここから」を、応援しています
教育費を出し切ったあなたは、子供のために全力で走り切った人です。
その走りの先に待っているのは、「もう手遅れ」ではありません。
ようやく自分の番が来ただけです。
やることは大きなことではありません。ねんきん定期便を引き出しから出してみてください。金額を見るだけでいい。計算しなくてもいい。
見るだけです。
そこから先は、一歩ずつ。あなたのペースで大丈夫です。