「塾代を払うために、貯金を取り崩している」
こういう相談が、40代のご家庭からとても多いです。
上の子の塾代がかさみ、毎月の収入では足りず、本来なら大学や老後に残しておきたかったお金に手をつけている。下の子にも同じようにかけてあげたい気持ちはある。でも、それをやったら手元に何も残らない。
今かけるお金と、将来に残すお金が、真正面からぶつかっている。
特に、結婚や出産が30代後半〜40代だったご夫婦は、子供の教育費のピークと自分たちの定年が、かなり近い時期に重なります。 「今は塾代を払うので精一杯。老後はその後で考える」。 でも、その"後"がほとんどない構造になっている。
こんにちは。Family Moneyの青木計太です。 晩産・晩婚夫婦のお金問題を専門にしているFPとして、教育費と老後資金の同時負担に悩むご家庭の相談を多くお受けしています。
1. 塾代は「今の出費」、削られているのは「未来のお金」
塾の請求書は毎月届きます。支払いの期限もあるし、子供の受験も待ってくれない。 だから「今は仕方ない」と、貯金から出す。
でも、その貯金は元々何のためのものだったでしょうか。
多くの場合、大学の入学金だったり、老後の生活を支えるお金だったり、「将来の自分たち」のためのものです。
目の前の請求書に追われていると、削られているのが"未来のお金"だということに気づきにくいのが、教育費の怖いところです。
セミナーでこういうお話をすることがあります。
「入口の小さな差は、今は見えません。でも10年、20年で見ると、数百万円の差になっていることがあります。特別なことをしたわけじゃなくて、ただ順番を少し早く整えただけで、それだけの差が開く」。
今の1年の判断が、子供が大学に入るとき、自分たちが定年を迎えるときの景色を大きく変えます。
2. 「上の子にかけたから、下の子にも」は本当に正解か
兄弟姉妹がいると、上の子と同じだけ下の子にもかけたくなります。 「上の子だけ塾に行かせて、下の子は何もしないのはかわいそう」。
その気持ちはとてもよく分かります。 でも、ここで一度立ち止まってほしいのです。
全員に"最大"をかけることが、家族にとって一番いいとは限らない。
私はいつも、こうお伝えしています。
「優先順位に正解はありません。食費、教育、趣味、健康。何が1番でもいい。ただ、欲望のまま全部に出すと、必ずどこかが足りなくなります。だからこそ、自分たちの家庭の価値観で並べる。それが"自分軸"です」。
「いくらかけるか」を先に考えると、答えが出ません。 先に考えるべきは、「わが家は子供に何を残したいのか」です。
金額ではなく、方針。 方針が決まれば、上の子と下の子で「同じ金額」ではなく「同じ考え方」で判断できるようになります。
3. 教育費を削る話ではなく、「順番」を整える話
「じゃあ塾をやめさせればいいの?」
そうではありません。 教育費を減らせという話ではなく、教育費と老後資金の「順番」を決めましょうという話です。
具体的には、こういう整理をしてみてください。
- 今すぐ使うお金(来年の塾代、入学金など)は、取り崩してでも出す
- 数年以内に使う教育費(大学の学費など)は、減らさない場所に置いておく
- 当分使わない老後のお金は、余りからコツコツ
この3つを分けるだけで、「全部ごちゃまぜで減っていく」状態から抜け出せます。
ここでもう一つ、セミナーでよくお伝えすることがあります。
「貯めたお金を100歳まで抱えて死んでも、それはそれで少しさびしいですよね。お金は、健康と家族との楽しい時間に使いながら、幸せに長生きするための道具です。だから、"好きじゃないものには使わない"と決めることが先なんです」。
削るのではなく、決めるだけ。 順番が見えれば、「今の塾代は未来の取り崩しだ」という不安が、「これは今ここにかけると決めたお金だ」という納得に変わります。
Q. まず何から始めればいいですか?
紙でもスマホのメモでもかまいません。 「今かけている塾代が、大学費用と老後のどこから出ているのか」を1回だけ書き出してみてください。
- 塾代は毎月いくらか
- その分、貯金がどのくらい減っているか
- 大学の入学金はいつまでに、いくらくらい必要か
この3つを並べるだけで、「なんとなく減っている」が「ここが足りなくなりそう」に変わります。
正解を出すことがゴールではありません。 今かけているお金の正体に、一度だけ気づく。それだけで、判断の軸ができます。
おわりに
教育費は、親の愛情がそのまま金額に出やすい支出です。 だからこそ、際限なくかけてしまう。 そして気づいたときには、自分たちの老後が消えている。
でも、大丈夫です。 「順番」を一度整理すれば、教育費も老後も、どちらも見通しが立つようになります。
お子さんの夢を応援しながら、自分たちの将来も守る。 その両方ができる道は、必ずあります。一緒に見つけていきましょう。応援しています。